構想10年、制作8年に亘る我が家の暖炉が完成しましたので、その制作の様子をここに一気に公開する事にします。

まず暖炉というものを設計するにあたり参考にした文献はこれ。

th_danro_details.jpg

http://www.yama-semi.com/?pid=72139483

随分昔に絶版となっているので、ボクは厚木図書館で借りて必要な部分だけコピーしました。

このマニュアルだけで果たしてちゃんと作れるのかやや不安だったので、何人かの「専門家」と称する人に相談したら「やめておけ」としか言われませんでしたけど、そんな事はおかまいなくどんどんやっちゃうのがジャズとスパイの共通点です。男のロマンです。

さて、ボクは一応建築学科を卒業しているのですが、自分の家を設計するにあたり描いた図面はこれだけ。方眼紙にボールペンです。大工さんはこれから手板に墨入れした番付図だけで建前をしました。

それはさておき、キッチン(図面の上の部屋)とリビング・ダイニングルームの間に暖炉を設置します。

th_%e6%9c%ac%e5%ae%85%e5%bb%ba%e7%af%89%e8%b3%87%e6%96%99

下はいまからちょうど8年前の写真です。一番手前の1畳の大きさの部分が暖炉になります。基礎の自重を入れると1トンにもなるであろう石のカタマリですから、それなりに頑丈な基礎を作ります。

因にこの家の基礎は一人職人さんを雇って自分で作りました。秋口に始めたのですが途中無理がたたって喘息の発作が出て入院するという思いがけない事態があり、コンクリートの打ち込みが晩秋になってしまいました。

th_2008-10-083

翌春、大工工事が始まる前に炉の前の床を大谷石で作りました。

th_2009spring-135

そして、家が建ってから大量の石材を運び入れるのは大変なので、必要と思われる材料をあらかじめ運んでおきました。多いに大工さんの邪魔になっていました。これらの大谷石は全て石蔵を解体した廃材です。

th_2009spring-229

それから7年、今年(2016年)の8月、ようやく暖炉に手を付けられるようなりました。

この暖炉は①暖房装置としての暖炉と②その熱を利用したオーブンと③クッキング用のホットプレートを組み合わせたもの。

下の写真で構造が理解できると思います。リビングに向かって暖炉が開いており、裏のキッチン側にオーブンとクッキングストーブ。クッキングストーブはロケットストーブの機構を採用してあり、その煙がオーブンの下の部屋を通って、さらにオーブンの内部を通り暖炉の太い煙道に合流する構造になっています。

大谷石はダイヤモンドの刃で切ったりタガネでハツッたりしますが、もの凄い砂埃が出るので家の中では出来ません。その都度重い石を外に入れたり出したり、積んだり降ろしたりするのは余りにも大変なので、ワークショップと称して仲間を集めて協力してもらいました。

これは暖炉の火床です。大谷石は火に強いとは言え、長年の使用で劣化した際に補修が出来るようにもっとも高温になるであろう部位は耐火煉瓦で覆う事にしました。穴があいているところは、大谷石の「味噌」と呼ばれる泥のようなものが詰まっていた欠損で、この自然に出来た穴を利用して灰を落とします。裏側の大きな平板はオーブンの床になります。

th_dscn6228

裏側。オーブンの下にも焚き口があり、ピザなどを連続して焼く事が出来るようにしてあります。

th_DSCN6180.jpg

暖炉の上に乗せる部材を加工しているところ。厚さが8寸、100kg近くある石材です。

th_dscn6216

石を乗せたところ。煙がスムーズに煙道へと流れるようにベル状に削ってあります。苦労して娘二人と手で持ち上げました。

th_dscn6240

加工を施した部材をもう一本乗せました。

th_dscn6304

今回はチェーンブロックを使用。最初からそうしていれば良かった。

th_DSCN6271.jpg

ドーム型のオーブン内部をアサヒキャスターで作るための型枠(なかご)を発砲スチロールで作ります。後で型枠を除去しやすいように、リンゴ箱で空洞を作り、その外側に50mmの厚板を貼付けまんじゅう形に削り出しました。最後に角材が差し込んである部分は煙が抜ける穴になります。

発泡スチロールはセメントとの密着性がいいので、離型材として新聞紙を濡らして密着させてから、アサヒキャスターを流し込みます。アサヒキャスターは高価なので本当に耐火性能が必要とされる部分だけに最小限使うようにします。ドームの天井の厚さが一番薄いところで5cmくらいになっている筈です。

硬化後型枠を除去した図。新聞紙は使用すると燃えてしまいます。

th_dscn6393

オーブンから暖炉のスモークチェンバーに繋げる煙道を、こんどはアサヒキャスターをコテで塗り付けて作ります。四角い穴にはダンパーも取り付けます。

次にオーブンの熱が逃げないように薄い天井の上に断熱層を作ります。

まずドームの上にアサヒキャスターで土手を作り、大谷石を削った時のクズをざっくりと敷き詰めて空気層をつくります。その上からも普通セメントのモルタルを塗ってフタをしますが、石の間にモルタルが流れ込まないようにガラス繊維のメッシュを敷きました。

そうこうしているうちに街の鉄工所に頼んでいたパーツが出来上がって来ました。暖炉の裏の反射板とスロートに取り付けるダンパーとクッキングストーブ用のホットプレートは厚さ9mmの鉄板。小さいものはオーブンの上につけるダンパーで厚さは6mm。これだけの加工をしてもらってお値段は何と8000円です。

th_dscn6639

早速取り付け。これも将来補修が出来るように、また熱膨張を吸収できるように接合部を工夫しています。

th_dscn6646

ここは暖炉上部のスロートとスモークチェンバーと呼ばれる部分。ここにダンパーを設置します。

th_dscn6677

ダンパーを正確に設置したらスモークチェンバーをアサヒキャスターで造形します。発泡スチロールで中子を作り、離型材としてクラフトテープをびっちりと張り付け、ラス金網を巻いてコテでアサヒキャスターを塗り付けます。

暖炉らしくなって来ました。手持ちの部材に会わせて随時設計しながら作って行くので、出来てみてこんな形になるのか〜と驚いたりします。

th_dscn6874

クッキングストーブのホットプレートも乗せました。穴の開いたところにロケットストーブの直火が当たるようになっています。

14585623_1731181423873362_1206618156_o

オーブンの扉。カラマツの厚板で、型枠も兼ねて作ったもの。内側は燃えるので鉄板を貼付けてありますが、その内不燃材で作り直す予定。

th_dscn6960

じゃ〜ん。漆喰でお化粧して本体は完成!

th_dscn6925

次は煙突をつながなくてはいけません。

ストーブ用のステンレスの煙突はとても高価だし、直径200mmのものはなかなか無いので、空調用のスパイラルダクトを利用。と言っても亜鉛引きのではなく、スモークチェンバーから立ち上がる一番高温になる部分は1Mだけ熱に強いステンレス製にして、その上6Mはガルバリウム鍍金製。200mmのパイプの外側には225mmの亜鉛引きのパイプ4Mを被せ二重煙突としました。メーカー(フカガワ)の営業所が鹿沼にあり定価より随分安く買えました。

th_DSCN7147.jpg

二重になっていない部分には、後ほどなまし銅管を巻きつけて温水器にする予定。

二重煙突の外側のダクトの設置法。2mmのワイヤーで吊っています。

th_DSCN7146.jpg

屋根の上の煙突トップ(陣笠と呼ぶ)は、自作も考えたが手間がかかるのでフカガワ製にしちゃいました。ストーブ用品より遥かに安いです。黒い防水紙が貼ってあるところはいつかサンルーフになる予定。

th_dscn6973

ハイ。これが煙突の付いた最新画像。今後もうちょっと整備します。

DSCN7145.JPG

燃えている動画はこちら。

使い方については今後別の記事で紹介する予定ですがとりあえずピザ第1号。

2017.7.9追記

最初に作った窯のフタは耐火コンクリートの型枠を兼ねて木製で作ったのですが、当然可燃性でだんだん燃えて痩せて来てしまったので、ドラム缶のフタを使って作り直しました。

th_DSCF4146.jpg

th_DSCF4210.jpg

窯の中の保温性を高める為に二重にしてあります。

th_DSCF4274.jpg

更に焚き口の方は耐火煉瓦をフタにしていたのですが、いつも御願いしている鉄工所に3mmくらいの鉄板に丸棒を溶接してもらいました。これで快適。

 

2017.9.23追記

未完だったロケットクッキングストーブ部分の焚き口がようやく完成しましたのでご報告。

焚き口の形状や材質を1年ほどかけて検討した結果、耐火コンクリートで造作することにしました。th_クッキング断面.jpg

これはその断面図。左下の耐火煉瓦を外すとよくあるペール缶のロケットストーブのように横から薪をくべることができます。横から奥まで(ヒートライザーの真下まで)薪を差し込むことができ、焚き始めや、短時間で強い火力を必要とするときに使用します。

下の耐火煉瓦を閉じて上の鉄板(赤い線)を開けるとドラム缶を使ったマスヒーターの「フィードチューブ」のようにやや太い薪を縦に入れることができ、長時間火力をもたせたいときに使用できます。

 

th_DSCF4359.jpg

これは耐火コンクリート(アサヒキャクター)の内側の型枠。一応鉄筋を入れてみました。

th_DSCF4364.jpg

打ち込み終了。

th_DSCF4376.jpg

型枠を外して完成。

th_IMG_0512.jpg

下の焚き口から薪を横方向に投入したところ。

スクリーンショット 2017-09-23 22.42.23.png

こちらは上から薪を縦に投入した図。ヒートライザーの先端から激しく炎が噴き出して、大成功!

th_スクリーンショット 2017-09-23 21.33.45.jpg

ついでにオーブンと暖炉の断面図も載せておきます。

 

th_DSCF4417.jpg

th_DSCF4386.jpg

th_DSCF4426.jpg

そしてこちらが完成した多機能暖炉の全貌!これからガンガン働いてもらいますよ。

 

2018.2.11追記

石窯が完成して約1年、何十回かパンやピザを焼いてみてだんだんこの窯の特性に慣れてきたところですが、今回少し改良工事をすることにしました。

当初オーブンと暖炉は厚さ9mmの鉄板で隔てられ、暖炉使用時の熱をオーブンで利用できるように意図したのですが、思ったより熱が伝わらず、むしろオーブン使用時の熱損失が大きいため、オーブン内部に耐火モルタルを塗りつけて壁に厚みを持たせることにしました。下の図の赤く塗った部分。

スクリーンショット 2018-02-11 22.54.17.png

同時に、下の燃焼室とオーブンとの隙間を半分以上塞いで炎が向かって右奥からオーブン内に吹き出すようにしました。これは排気口が左手前にあり、従来の設計だと窯の左側が火力が強く焼き具合にムラができてしまうため、熱気が窯の対角線状に流れ熱がより均一に回るように意図したもの。

スクリーンショット 2018-02-11 23.39.33.pngこれは施工途中。白っぽい部分が固めに練った粘土状の耐火モルタルを塗りつけたところ。耐火モルタルは高価なので肉の厚い部分にベルギーレンガを埋め込んでいます。赤い線で囲んだ部分が燃焼室との開口部。

この改良によって期待されることは、①鉄板からの熱の損失が軽減する②蓄熱量が多くなる③窯の奥部分からの輻射熱がより近く働く④窯の容積が小さくなり熱効率が高まる⑤熱気の対流がよりスムーズになり温度が均一になる、といったところ。

 

 

広告