ロケット・マス・ヒーターrocket mass heaterの「マス」というのは大きなカタマリの事で、ストーブ本体から排出された高温の燃焼ガスの熱を、石や煉瓦や粘土など重い大きなカタマリに蓄えてその輻射熱によってじんわりと暖房しようといわけです。

この蓄熱体はある程度のボリウムがあって初めて目的を達成するもので、少なくとも1トンの材料を必要とします。したがって、それぞれの地域で最も安価に手に入る素材を使う事が肝心です。多くの事例では石と粘土質の土が使われますが、ウチの近所では粘土が手に入らず、代わりに大谷石の建築廃材が大量に手に入ったのでこれを主に使う事にしました。

普通建材としての大谷石は幅約1尺x長さ3尺で厚さは1尺刻みでいろいろなサイズがあります。ここで使ったのは古い石蔵を解体した廃材で、厚さ5寸(ごとう)程度のもの。これ一本で70kgくらいあります。

まず、ベンチになる位置に石を敷き詰めます。ここは後で土で埋めてしまうので見てくれの悪い石でOK。これだけでざっと400kg位。

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その上に石を立ち上げ、ベンチの形を作って行きます。

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中に砂利を敷き高さ調節をしてΦ150mmの土管(これも解体現場から出た廃材)を設置。普通、煙道には空調用の亜鉛引きの巻きパイプを使うケースが多いですが、亜鉛引きでも長年の間には腐食しますし、何しろちょうど必要な本数の土管が手許にあったため、一も二もなくこちらを採用。ただ、このストーブはΦ200mmの煙道を想定したシステムなので、十分な断面積を確保するためにルートを2本にしています。この2本に分岐し、また1本に合流する部分も気体がスムーズに流れるようにモルタルなどで出来るだけ滑らかに仕上げます。

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更にこうしたジョイント部分には煤が貯まりやすい「らしい」のでメンテナンス孔を設けます(そのように先輩に勧められました)。ボイド管で型枠を作り、モルタルで埋める。ここには後でタイルを被せます。

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こちらはベンチになる部分。煙道である土管を粘土や石で埋めていきます。先に書いたように当地では粘土が採掘できないので、耐火モルタルやベントナイトで代用。これらの資材はお金が掛かるので、骨材としてなるべく多くの石ころを埋め込み、粘土はそのつなぎとして最低限使用するようにしています。ちなみにに耐火モルタルとは耐火セメントに砂のような骨材が混ぜてあるもので、純然たる粘土より扱いやすいですが、これにこれ以上砂を混ぜると粘り気が無くなります。一方農業資材のベントナイトは粘土そのものといっていいもので、粉末に水を含ませて使います。その時かなりの量の砂を混ぜた方が扱いやすくなり、熱の伝導もよくなり、また安くあげる事が出来ます。ここでは砂はタダのようなものですから。でも、もし将来絶対に解体して補修する必要がないという自信があれば、コンクリートで埋めてしまうのが一番安上がりかもしれません。

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そして蓄熱ベンチを石と粘土で埋めた所

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ベンチの座面と床にモルタルを塗る。後で更に仕上げをする予定。だいぶ完成イメージに近づいて来ました。th_DSCN9712

次の写真はベンチ以外の煙道。ここもパイプは使わずに、断面が300㎠以上になるように石とコンクリート、モルタルで造作。煙道の底面だけを半円筒状に左官で仕上げ、上は煉瓦でフタをして、床材としてテラコッタタイルで仕上げます。「なぜか」最初から布基礎にΦ150mmの穴を3つ開けてあったので、その2つを利用して煙道を室外に抜きます。そして更に、そこにサッシの廃材でサンルームを作りそこも温めてしまおうという計画。(これはいつになることか、、、)

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こちらはストーブ側の煙道(ベンチ)。一番暖かい玉座になりま〜す。

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さて、次は点検口のフタを作ります。

一番ストーブ本体に近い点検口付近はさぞ高温になるかと思い、当初「アサヒキャスト」のような耐火素材を使用するつもりでしたが、実際は大半の熱はドラム缶の表面から放出されているので、普通のモルタルで十分のようです。

点検口に使ったのと同じボイド管を使いモルタルを打ち込みます。ただし、ただ管の中にモルタルを流し込むと、ボイド管の厚み分径が小さくなってしまうので、ボイド管の外周に鉄板などをぐるっと巻きつけて型枠とします。取手になる部分はスタイロフォームなどで「あんこ」を作って埋め込み、後で取り除きます。

翌日、まだ完全に強度が出ないうちに型枠から外し、点検口に合わせてみて、必要に応じて鉄ヤスリなどで摺り合わせます。

 

 

2017.9.24追記

ストーブを作り始めて3回目の冬を前にようやく蓄熱ベンチを仕上げました。バーボンが旨そうな空間になりました〜!

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